
パソコンの記憶装置として人気のSSDですが、実は一口にSSDと言っても、その中身はさまざまです。
サイズや接続規格(インターフェース)によって、SSDの性能が変わってきます。
例えば、2.5インチのSSDは一般的ですが、最近はM.2 SSDという小型で高速なSSDが普及してきました。
M.2 SSDは、高速な接続規格を採用しているため、ゲーマーやクリエイターなど、高速なストレージを求める人に人気があります。
しかし、M.2 SSDにもSATAやPCIeというインターフェースがあり、どれを選ぶかによって速度が違います。
この記事では、SSDのサイズや接続規格(インターフェース)、NVMeなどについて詳しく解説していきます。
SSDとは?
SSD(Solid State Drive)とは、半導体メモリを使ってデータを保存するストレージです。
データに素速くアクセスできるので、HDDよりパソコンやアプリケーションの動作が快適です。
SSDのサイズについて

SSDのサイズには、フォームファクタと呼ばれる規格が存在します。
一般的なHDDと同じサイズの「1.8インチ」や「2.5インチ」のほか、カード型の小さなサイズの「mSATA」や「M.2」などがあります。
1.8インチ SSDはノートパソコンなどで使用されていましたが、最近ではあまり見かけません。
※M.2については後ほど詳しく解説します。
SSDの接続規格(インターフェース)
Serial ATA(SATA)

Serial ATA(SATA)とは、HDDやSSDなどのストレージをマザーボードに接続するための規格です。
現在の主流は「SATA 3」で、最大6.0Gbpsの帯域幅を持ちます。
SATA 3は、SATA 1やSATA 2と互換性がありますが、接続すると低い方の速度に制限されます。
【Serial ATA(SATA)の規格と転送速度】
規格 | 帯域幅 | 転送速度 |
---|---|---|
SATA 1 | 1.5 Gbps | 150 MB/s |
SATA 2 | 3.0 Gbps | 300 MB/s |
SATA 3 | 6.0 Gbps | 600 MB/s |
M.2 SSD

M.2 SSDとは、マザーボードやPCIe拡張インターフェースに備えられた「M.2」端子に接続する規格で、mSATAの後継品です。SATAとPCIeの通信プロトコル両方をサポートしており、高速なデータ転送が可能です。
端子は、「B key」、「M key」、「B&M key」の3種類あり、形状によって通信規格が異なります。
【M.2の接続端子と通信規格】
接続端子 | 通信規格 |
---|---|
B key | PCIe ×2(NVMe)、SATA、USB |
M key | PCIe ×4(NVMe) |
B&M key | 両方に対応 |
また、M.2には、フォームファクタと呼ばれるサイズがあります。
主流は「Type2280」です。
【M.2のフォームファクタとサイズ】
フォームファクタ | サイズ(W x H) |
---|---|
Type2230 | 22mm x 30mm |
Type2242 | 22mm x 42mm |
Type2260 | 22mm x 60mm |
Type2280 | 22mm x 80mm |
Type22110 | 22mm x 110mm |
PCIe(PCI Express)

PCIe(PCI Express)とは、高速なデータ転送が可能な拡張カード用の規格です。
主にグラフィックカードやサウンドカード、ストレージデバイスなどに使用されます。
PCIeのバージョンとレーン数によって帯域幅が異なります。
【PCIeのバージョンとレーン数による帯域幅の違い】
レーン数/規格 | PCI Express 1.1 (Gen1) | PCI Express 2.0 (Gen2) | PCI Express 3.0 (Gen3) | PCI Express 4.0 (Gen4) | PCI Express 5.0 (Gen5) |
---|---|---|---|---|---|
x1 | 2.5Gbps | 5Gbps | 8Gbps | 16Gbps | 32Gbps |
x2 | 5Gbps | 10Gbps | 16Gbps | 32Gbps | 64Gbps |
x4 | 10Gbps | 20Gbps | 32Gbps | 64Gbps | 128Gbps |
x8 | 20Gbps | 40Gbps | 64Gbps | 128Gbps | 256Gbps |
x16 | 40Gbps | 80Gbps | 128Gbps | 256Gbps | 512Gbps |
マザーボード側にM.2 SSDスロットが非搭載の場合、PCIeインターフェースに空きがあれば、市販の「M.2 SSD用PCIeボード」を取り付けることでM.2 SSDが利用できます。
ただし、マザーボード側のPCIeバージョンとM.2 SSDのPCIeバージョンが異なる場合は、速度が下位バージョンに制限されます。
たとえば、マザーボードがPCIe 3.0(Gen3)の場合は、M.2 SSD PCIe 4.0(Gen4)を搭載しても、PCIe 3.0(Gen3)の速度しか出ません。
NVMeとは
NVMe(Non-Volatile Memory Express)とは、SSDの性能を向上させるために開発された通信規格です。PCIeインターフェイスを介して利用できます。
PCIeインターフェースを備えたNVMeは、SATAインターフェースを備えたSSDよりも高速な転送速度を実現します。
NVMeは、ゲームやクリエイターなどのデータ転送を大量に使用するアプリケーションに最適です。
NANDセルの種類と特徴
NANDセルとは、データを記録する入れ物です。
1つのセルに何ビットのデータを保存できるかによって、SLC(Single Level Cell)、MLC(Multiple Level Cell)、TLC(Triple Level Cell)、QLC(Quad-Level Cell)に分類されます。
【NANDセルの特徴】
特徴 / NANDセル | SLC | MLC | TLC | QLC |
---|---|---|---|---|
ビット数 | 1 bit | 2 bit | 3 bit | 4 bit |
1セルあたり書き換え上限目安 | 10万回 | 1万回 | 5000回 | 1000回 |
耐久性 | 非常に高い | 高い | 普通 | 低い |
性能 | 非常に高い | 高い | 普通 | 低い |
価格 | 非常に高い | 高い | 普通 | 安い |
用途 | 産業 | サーバー | 一般 | 一般 |
NANDセルの種類によって、SSDの性能や寿命は変わります。
近年では、メモリセルを縦に積み重ねてさらに大容量化した「3D NAND」が主流です。
よくある質問
SATAは、通信プロトコルの名前であり、SATA用の端子やケーブルなどの接続規格としても使われます。
レーンとは、PCIeを介してデータを転送するために使用できる通信経路です。
レーン数が多いほど、データ転送速度は速くなりますがCPU、マザーボードによって使用可能な上限が決まっています。
2.5インチ SSD | M.2 SATA SSD | M.2 PCIe SSD | |
---|---|---|---|
接続規格 | SATA 3 | M.2 (B key or B&M key) | M.2 (M key or B&M key) |
通信規格 | SATA 3 | SATA 3、USB | NVMe |
メリット | ・価格が安い ・発熱・消費電力が低い | ・価格が安い ・発熱・消費電力が低い | ・データ転送が高速 |
デメリット | ・電源、接続ケーブルが必要 | ・特になし | ・価格が高い ・発熱・消費電力が高い ・PCIeのレーン数を使用する |
ただし、SSDには、「ウェアレベリング」と呼ばれる技術によって、NANDセルの書き込みを均等になるように設計されています。
通常の使用であれば、NANDセルの書き換え上限(寿命)について心配する必要はありません。